Olden scape -昔日風景-

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Review

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■ アクアドール3189 メアリー編

★☆★ オススメ! ★☆★

どこにでもいる平凡な女性メアリーは、ある日1人の男性と出会う。
幼馴染とピアノが在れば幸せだった彼女の日常。
しかし男性と出会うことで、それは無常にも銃弾で終わりを告げた。

人と人とも思わない、欲と力に溺れる軍人や官僚たち。
彼らの独裁に反発し暴動を起こす革命家たち。
2つの波に力なく流されていく人々…。
故郷という小さな世界から飛び出したメアリーは、そんな世情に疑問を覚えてゆく…。

――ときは大陸暦3189年。
「ビッグウェイブ」と呼ばれる、今一歩で成功に届かず「指導者の死」という形で幕を閉じた革命運動より19年後、各地の抵抗運動がまだまだ小さな熾き火でしかない、冬の終わりのことだった…。


======== 感想 ==========
RPGツクール2000を製作ツールとした分岐のない一本道のADV。
デジファミのコンテストパーク受賞作品のリメイクであり、わたしはリメイク前のものをプレイしたことがあるのですが、シナリオがかなり変わっていて、キャラクターデザインも一新されているため、旧作をプレイした方もほぼ新しい作品として楽しめます。
製作ペースからすると完成までにまだまだ時間のかかる作品かもしれませんが、シナリオが非常に好みのため、完成が非常に楽しみな作品でもあります。

プレイ時間は、各編それぞれクリアまで6〜7時間かかるため、総計約20時間前後。
ちなみに、わざわざ「メアリー編」と銘打たれているのは、この事件と同時進行するもう1つの「アクアドール3189」の構想もあるためとか。メアリー編は前・中・後編の3部作で、後編のみシェア予定のようです。


シナリオについて。
3部作となり、様々なキャラクターの苦悩や葛藤を中心として展開し、物語に深みが増しています。ただその分、視点移動が多いのが難点。
また、「圧政」「革命」という非常に重いテーマを背負っている作品であるためか、人の死が多く描かれているので、流血シーンや暴力シーンが苦手な方は注意が必要です。
シーンによっては銃に撃たれた人が痙攣したりと、微妙に生々しい部分も…。

各編詳細は以下のとおり。

****************
■ メアリー編(前編) … Prologue〜Episode7
メアリーの旅の始まりから彼女の転換期までのエピソード。
前編の見所はガイルさん。渋い。大人の魅力です。
力に力でもって対抗することの空しさや、理想だけが一人歩きを始める危険性などを語るシーンは、それらを体験したからこその苦さが上手く表現されていると思いました。
ただ、レインボー遺跡のエピソードは何か理由があるのか不安なところ。あそこにメアリーがいかなければならなかった理由などが、後で明かされればいいなぁと思います。

■ メアリー編(中編) … Episode8〜13
仲間と離れたメアリーの旅が続きます。
自己不振に陥っている彼女を、「父親に恩があるから」、「あなたは希望だから」と身を投げ打って庇う人々に、メアリーはやっと戦う理由を見つけます。
親と子は関係なく、どう生きるかは結局本人次第です。けれど、どうしても親の影というものは付きまとうもの。なんの力もないと後ろ向きだったメアリーが、そういった"生まれ"の重さを受け入れ決意するシーンが印象的でした。
「諦めることに慣れないで」という彼女のセリフには、弱者として生きてきたからこその重みがあると思います。

■ メアリー編(後編) … Episode14〜
Comming Soon...
****************

全体的に予想がつきやすい話なので、皇帝の正体については結構あの人かな?と思う人も多いのでは。
これで違っていたら逆に驚くかもしれません。


グラフィックについて。
旧作とは一新されているのですが、一番様変わりしているのはメアリー。
黒髪ストレートだったのが赤毛のツインテールになっています。服装は周囲のキャラたちの服装と比べると、やや前時代的かなと思いました。
各キャラクター共に表情も多く、重要なイベントではスチルも入るのですが、いかんせんツクール2000自体の解像度があまり高くないため、全画面にすると粗さが目立ってしまって残念でした。パソコンに負担はかかりますが、ここはできればウィンドウモードでプレイしてもらいたいなと思います。

音楽について。
企画者様本人が音楽家でもあるので、音楽は全てオリジナル。
旧作でもおなじみの「雪の街」や「革命」はそのままだったので、聴いていて懐かしかったです。
推奨はXG音源でのプレイですが、悲しいかなわたしのパソコンにはXG音源はないのでGM音源でプレイしました。XG音源のあるかたはぜひそちらでプレイしてみてください。
ちなみに今までの数ある音楽の中で一番好きなのは、前編のエンディングテーマである「永遠に雪が降る」。
ピアノをメインとした曲で、ちらりちらりと舞い降る雪の中に立つメアリー…なイメージですが、中盤の転調部分は変わりゆく世界や心情なども表しているような気もします。
また、中編のエンディングテーマ「あなたのことを」は何とMIDIではなく歌となっています。
しっとりとしたバラードで、プレイ中ではあまりしっかり聴けませんが、歌い手である沙波さんはMUSIE登録のシンガーなので、そちらでゆっくり聴いてみるといいかもしれません。


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◆作者: twomoon 様
◆HP: twomoon's company
 [URL] http://www.katsumi-k.net/twomoon/
◆制作ツール: RPGツクール2000
◆傾向: ビジュアルノベル、全3部、選択肢なし

date:2005/05/17
update:2005/05/17(Tue) 01:02

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